降級廃止の効果を検証しよう

2年前に書いた事の答え合わせ。
のようなもの。

の前に、シリーズの第2回で降級廃止に対して危惧していた部分を引用したい。

降級廃止後の混乱で、個人的に最も恐れているのが評論家・マスコミによる批判キャンペーンだ。
降級を廃止した事で新たな問題が発生すれば「それ見たことか、降級はあったほうが良かったんだ」と既存の問題や改善された部分を無視して主張する輩は現れる。
名指しはしないが、そんな評論家は何人も頭に浮かぶ。
表面上の問題点だけを指摘して権力に対して小気味良く批判するような文章は、わざわざ数字を出してクドクド背景から解説するような文章よりも軽く読めるし共感を得るであろう。
それは競馬ファンに留まらず、現状の認識を思えば厩舎関係者や馬主の多くも同調するだろう。
その声が大きくなればJRAは対応を迫られる。
その結果が芝からダートへの転換供給だとすれば・・・
個人的には最悪の帰結である。

その危惧していた批判記事の一例が、こちらの日経新聞の記事である

在籍頭数の減少で出走馬が集まらないレースも増えた。4月下旬~5月末に行われる東京、京都競馬の期間の4歳以上1勝クラス(同時に開催された福島、新潟も含む)のレースでは、20年は全78レース中、10レースで出走頭数がひとケタだった。そのうち1つはレース成立に必要な頭数ぎりぎりの5頭立て。ほかにも7頭立てが1つ、8頭立てが2つ出現した。19年の同期間は全81レース中、ひとケタの出走頭数のレースは7つ。8頭以下のレースは2つだけだった。

~中略~

ただ、競走馬の生産頭数も増え、馬資源が確保できるようになったことから、制度維持の必要性は薄れていた。降級でオープンや3勝クラスなどの在籍馬が減り、売り上げが見込める上級クラスのレースの頭数が集まらないなどの問題もあった。降級廃止には上級クラスのレースの出走頭数を増やして魅力を高めたり、レースの数を増やしたりする狙いがあった。

それでは降級廃止からの1年間でどのような変化があったか。目立ったのは各クラスのレースの水準の低下である。

降級廃止で3歳馬が有利になったのはその通りだが、何故JRAが降級を廃止しなければならなかったのか。
その理由と狙いがズレている典型的な記事である。
需給問題を書いてきた野元賢一の文章を日経の後輩は読んでいないようだ。

競走馬資源は20年前から確保されている。過剰なレベルで。
その根本の認識が欠けていなければ書けないワードが記事内に何個も出てくる。
この20年、JRAの施策は馬を減らし分散化するためのものが重ねられていることを理解していない。
この記事を書いてる記者や賛同している人間は、それを叶える事は中長距離線や障害競走を削れって意味になるのを理解してるんですかね。
それでいいならそれでいいですけど、そんな競馬界になるのは私は嫌ですので、こんな記事で降級廃止を批判しないようにきっちりと評価しよう、というのが今回のお話である。
毎度のことながら、以前の記事を読んでない人は、先に見るのを推奨である。

その1.降級制度を廃止する理由とその疑問 
その2.降級廃止が招く混乱の可能性
その3.登録枠の拡大を再評価しよう
その4.私的3歳ダート路線整備論
その5.降級廃止にも対応できる優先出走順位改革案
その6. JRAのスリーアウト法導入についての一考察
その7.将来トレセンの25%が廃業する事になる(かもしれない)という話
その8.新馬戦の除外ラッシュが長期化するかもね

随分と長くなってしまったのでピックアップするとすれば、その1その2その4その7
それでも長げぇよ。

そうそう、今回は扱わないが、出走数の減少は新馬の増加もかなり大きな要素なのも認識してくれよな。