登録枠の拡大を再評価しよう

現状のJRAは競走馬の供給過多であるという事を降級廃止問題を通じて2度に渡って書いているが、その原因となった2000年の予備登録枠拡大は、日本競馬に何をもたらしたのだろうか。
ここでいう再評価というのは「案外よかったね」という意味ではなく、文字通りの再評価である。
自分なりに思いつくまま書き連ねてみた。
読んでみた人も、この改革によって何が変わったのかを考えてみて欲しい。
近年の日本競馬に対するスタンスを考える上で、避けてはならない部分のはずである。

ちなみに前2回を見てない人は、先にそちらを見るのを推奨します。

その1.降級制度を廃止する理由とその疑問 
その2.降級廃止が招く混乱の可能性

馬主は入れたい馬をある程度自由にJRAに入れる事が出来るようになった

少ない登録枠で断られていた馬も厩舎のレベルを気にしなければJRAへ入れることができるようになった。

厩舎間の成績差が広がった

上位厩舎は素質馬がより集まり成績もより伸び、ヘッポコ厩舎は馬質が下がり成績も下降した。成績差が広がり実質倒産となる免許返上も発生した。
競争原理が働くようになり競争社会として正常化したとも言えるが、うろたえたJRAは登録枠を2.5倍に引き下げた。
JRAは競争と保護の間で右往左往している。
男ならバシッと決めんしゃい、とも思うが利害関係や労組との調整も大変なのだろう。
JRAは優柔不断な女の子なのかもしれない。

外厩の重要性が増しトレセンの地位が低下した

膨らんだ管理枠を活用するために、トレセンと外厩の出入りを増やして状態の良い馬で馬房を満たして出走回数を増やす手段が一般化した。
コンディショニング程度だった役割は、次第にトレセンで行っていた追い切り等の強い負荷や長期的な調教による悪癖の矯正など手広く手がけるようになった一方で、対象的にトレセンに滞在する期間は短くなり、その地位が相対的に低下した。

厩舎の平均出走回数が増加した

1999年出走回数1位は堀井雅広厩舎の年315走。
2017年出走回数1位は矢作芳人厩舎の年729走。
矢作厩舎が特別なのもあるが、2017年は7厩舎が年500走を越えた。
ちなみに、年315走は2017年だと148位に相当する。

JRAの在籍馬が膨れ、出走回数が限界点にまで達した。

それまで8000頭弱だった年間出走頭数はあっという間に1万頭を越え、出走回数も4万から5万前後へ増加した。

除外ラッシュが通年化した

それまで2場開催時に起きる程度だった除外ラッシュが通年化した。
条件クラスには優先出走制度が設けられたが、優先権を得られなかった馬のローテーション構築が困難になった。

エージェントの影響力が強くなった

騎手は増加した除外の影響を避け確実に出走できる権利馬を求めた。
また馬主・調教師側も権利馬の機会を逃さぬよう有力騎手を求めた。
その結果、双方を結びつけるエージェントの影響力が強くなり、有力騎手の寡占と全体的な流動化が進んだ。
下級条件でも結果が求められるようになり、多少のミスに寛大な時代は終わりを告げた。

色々あったけど、減量騎手の騎乗機会が増えた

騎手の流動化とエージェントによる騎乗馬の確保が進んだ結果、新人・中堅下位騎手の境遇が悪化した。
JRAもコラいかんとデビュー数を絞り、2012年には「引退後の調教助手としての給料が減るで~」と脅して23人も引退させる等の手を打った結果、質はともかく新人騎手1人当たりの騎乗回数は増えた。
トップ騎手>懇意の騎手≒減量騎手>適当に空いてた騎手、という全体的なプライオリティが形成され、成績を残せぬまま減量の取れた中堅騎手の境遇は著しく悪化した。
個人的には低質馬でも結果を残して徐々にステップアップしていく形は、そんなに悪いものではないと思ったりもする。

晩成型種牡馬の成績と境遇が悪化した

新馬・未勝利の除外ラッシュが深刻化する年明け前にある程度の目処が付く仕上がりの早い種牡馬の評価が上がる一方で、産駒がなかなか権利を取れない晩成種牡馬の成績と評価が低下した。
また、条件戦でも休み明けから結果を求められるようになったが、晩成タイプは得てして叩き良化型が多く、この面でも逆風となった。
ただでさえ敬遠されていたこの手の種牡馬の境遇は更に悪化した。

地方競馬に入厩する新馬が減少した

生産頭数が減少しているのにも関わらずJRAの入厩馬が増えた結果、地方競馬に入る馬、特に新馬の入厩が減少した。競馬場廃止も何のそのである。
JRAの新馬・未勝利戦は体のいいクレーミング競争と化し、この成績ならこの競馬場といった感じで一時期のサマーセールのようである。また、JRAで勝てなくてもトレセンで鍛えておけば、地方転厩後にある程度稼げてしまうという流れが形成された事も追い打ちとなっている。
協会も主催者も色々と施策を打っているが、賞金補助によりその日の最高優勝賞金が5頭立ての新馬戦、というシュールな光景が一部競馬場で繰り広げられている。
この件に関しては次回掘り下げる。先月上げた動画の文章化的内容だけどネ。
本当は先にアップする予定が、動画作成時に作ったExcelが吹っ飛んで先送りにしたのは内緒だ。

オーナーブリーダーの淘汰も進んだ

それまで、生産、初期育成、休養を北海道で一元管理していたオーナーブリーダーが、トレセン近郊の外厩での調整が一般的になったことで、そのメリットの一部が消えた。
と同時に、登録枠の拡大とは関係ないが、BTCの充実した施設と新進気鋭の育成牧場の出現で自前施設による育成のメリットも消えた、というか時代遅れになっていた。
一方で本州に育成拠点を持つオーナーブリーダーは頻繁化した外厩調整も手元で行うことで一元管理のメリットが増大した。


コメント

  1. ペルノ より:

    確実にレース数を増やせるのは、障害競走の廃止ぐらいでしょうね

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます。

      そこに気付いてしまわれましたか。
      ありえない話ではない、、、というより結構実現性のある話ですからねぇ。
      障害レース好きとしては、そこも回避して欲しいところなのですが。

  2. 名無し より:

    なんともしがたいですなぁ
    2場開催時に盛岡とか借りて開催するわけにもいかんだろうし
    最大の禁じ手だ

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます

      地方の場借は交流競走の増発でじわりじわりと侵食させる形で進行させているので、そこまで禁じ手でもないとは思います。
      ただ、コストが全く見合わないという問題がありますが。