降級廃止から2ヶ月が経っての出走状況中間評価

カカオ混入問題による大量除外で正当な評価ができねぇ。
という大問題を抱えつつのエントリーという事をご容赦下さい。

本来なら夏開催が終わった所で書くべきなのかもしれないが、とりあえずの効果は既に見え始めてるので、一旦まとめておきましょう。

レース編成の下準備

2006年のクラス編成改正では、レース編成の調整を殆ど行わなかった結果、準オープンで深刻な除外ラッシュが発生した。
その教訓をもとに、今回の降級廃止等ではクラス毎のレース数が以下のように調整されている。


※新潟・小倉・札幌開催分も含む

頭数が約15%減少する500万下競走が削減する一方、上級条件は所属頭数の増加分を大まかに上乗せ。
未勝利戦の増加はスーパー未勝利廃止による前倒し分で、これも500万下の削減で補っている。

条件クラス出走数の概要


※()内は混入問題発生週

混入問題による除外の影響をどう評価するか難しい。
ただ、今回の改革は、秋口以降の500万下除外ラッシュ対策が大きなポイントなだけに、混入問題を抜きにしても評価を下すのはまだ早いだろう。

一応、500万下における権利の有無による出走間隔の格差は、昨年と変わらない、というか少々悪化している。


※混入問題による除外馬も前走着順を基準に集計しています(以下同)

頭数が減った分のレース数をまんま減らした上に未勝利の増発分を捻出、おまけに混入問題も重なったので当然といえば当然の結果。

ただ、レース数が据え置きとなった夏の福島500万下ダ1150m戦で13年ぶりにフルゲート割れが発生し、過去5年でフルゲート率28/29だった夏の中京500万下ダ1400m以下戦でも2競走がフルゲート割れとなったのは降級廃止の効果とも言え、要所要所で秋以降の状況改善に期待が持てる兆候も出ている。
大量除外という特殊状況が発生したことを考えれば、今の所は机上の計画に上手い事乗っていると評価して良いかもしれない。

ダート短距離路線はどうなった

「降級廃止が招く混乱の可能性」では「何か対策をしないとダート1000万下の短距離が大混乱になる」と書いたが、JRA側も所属頭数の増加分をレース編成に反映させた。
では、その結果どうなったのか。
1000万下ダート1400m以下の除外状況を昨年と比較してみよう。

(※は2019から増発分)

頭数の増加分しか反映しなかったので、除外状況は殆ど改善しませんでした。
当然といえば当然である。
少し悪化気味に見えるのは、箕面特別が混入問題で6頭が除外取消になった影響か。

ある程度月日を重ねれば、勝ち上がり数の増加と500万下からの昇級減少で多少の改善が見込めるものの、解決と呼べるレベルとするには更に踏み込んで競走数を増やす必要がある。
ついでに、今回削ったのは500万下だが、出走状況を考えると更に削るどころかある程度は回復させなけらばならない状態。
では、その原資となるレースはどこにあるのだろうか。

3歳未勝利戦の出走状況

今年は降級廃止の他に、未勝利戦で3走成績による出走制限(スリーアウト制)が実施されるようになった。
3戦連続9着以下となった馬は2ヶ月間の出走停止となる。
併せて秋の中山・阪神で行われる3歳未勝利戦、いわるゆスーパー未勝利が廃止され、その分の競走が前倒しで実施されている。
では、その効果を出走状況から見てみよう。

除外問題との差し引きが何とも言えないが、出走回数はレース数が増えたにも関わらず昨年から減少。
さらに大きな変化として出走頭数が98頭減少しており、これは確実にスリーアウト制度の効果が出ていると言って良いだろう。
夏開催8週分の出走頭数は122頭減となってるが、これはほぼ3歳未勝利の減少分が占めている。
この頭数減少にレース数増加も相まって、非権利馬の出走機会は改善を見せている。

年明けからの運用開始だけでこれだけの効果を挙げたスリーアウト制。
フル運用となれば相応の効果が期待できる所であり、出走数の減少も見込める。
そして、出走数が減少すれば、少頭数の未勝利戦も増えてくるだろう。
そうなれば、少頭数の未勝利戦に対し「充実した番組を」というおなじみの理由で上級クラスの競走に転換してしまえばいい。
半年以上前にデイリーの馬鹿記事に文句をつけたエントリーを繰り返す形となるが、現状は想定されるストーリーラインに乗りつつあるし、20年に渡って続く除外問題に対する一つの納めどころとなる。
個人的には3年~5年後ぐらいに未勝利戦の削減が始まると見ているが、その辺はJRAのさじ加減次第である。

下位厩舎は耐えられるか?

スリーアウト制度の狙いは、未勝利と下級条件で分散負担していた過剰な出走需要を低質未勝利馬の追放により解消させることにある。
これまた以前に書いたエントリーからの繰り返しとなるが、この流れは未勝利の低質馬を多く抱えている下位厩舎の経営に打撃だ。
短期的にはマル地馬を増やす手段はあるが、そうなればJRAも相応の対策を取るだろうし、そもそも地方競馬の賞金が回復する中でJRAにただ出走する事が馬主にとってどこまで魅力的なのかも微妙なところ。

除外問題の根本的な解決には馬房削減かレース数の増加が必要となるが、その議論も起きぬまま馬房削減への道を進んでいる。

最後に

条件クラスを「○勝クラス」って書くの忘れてた。
個人的に無意識な専門用語を改めるこの変更には賛成派なんですが、併記形式はいつまでも続けてほしいもんです。

その1.降級制度を廃止する理由とその疑問 
その2.降級廃止が招く混乱の可能性
その3.登録枠の拡大を再評価しよう
その4.私的3歳ダート路線整備論
その5.降級廃止にも対応できる優先出走順位改革案
その6. JRAのスリーアウト法導入についての一考察
その7.将来トレセンの25%が廃業する事になる(かもしれない)という話