余計なお話が好きだ

余計なお話が好きだ

重種馬の肥育や屠畜は難しいらしい。
重種馬肉で一番高いのが首周りの霜降りらしいんですが、肥育段階で脂肪が付きすぎるとそこに血腫が生じてしまったり、電気ショックをバシッと入れる時にダメージが生じることがあり、それだけで枝肉に数万レベルの価格差が生じてしまう。
セレクトセールで感覚が麻痺してしまいがちですが、5万円は5万円の価値があるわけで・・・

という話が駄目な人はお戻り下さい。
<戻る>


さて、日本の軽種馬の血統登録数は牡馬の方が多い年が圧倒的に多い。
それは統計的に牡馬の方が生まれやすい訳ではなく、血統的にも馬格的にも競走馬として売れる見込みが薄いと判断された段階でもう一つの畜産業として全うしてもらうのが牝馬の方に多い。というのが定説となっている。
血統登録代の15000円も15000円の価値があるわけでして、もっと悪どい場合は産まれなかった事にして出産後支払い契約の種付け料を踏み倒すケースもありやなしや。

国内で消費される馬肉は主に九州で生産される脂の乗った重種と主に東北で生産される赤身で淡白な軽種馬に分かれる。
サラブレッドは食肉に適さないと言う人もいるが、それなら東北で屠畜される年間4000頭前後の軽種馬はどこからやってきたのだろう。
実際問題、海外から生体輸入されて肥育した馬も含まれているかもしれないが、重種より単価の安い軽種馬の大勢が海外産とは考え難く、やはりそういう事なのではなかろうか。
そもそも、国内産が悪で輸入なら良しという考えも分からんけど。

という事で、東北地区の屠畜頭数推移を見てみよう。

※農林水産省:畜産物流通調査より

全体的に減少傾向が続いていたものの2021年に若干の上振れの気配を見せている。
この辺は生産頭数の問題だけでなく、コロナによる外食産業需要だったり屠畜場の稼働率も影響してくるが、2015年から牡牝の登録数に差が無くなった事を考えると、単純に入ってくる馬が減った感じもなきにしもあらず。

現在は生産頭数がどんどん増加中。
地方競馬の需要が旺盛で生産数の増加を吸収できる間は良いが、吸収したものは放出もしないといけない訳でして、この辺の数字が上がって来るとなると、そういう事なのだろうと推測しなければならない。
それがどうという話でもないけれど。


最近流行りの競走馬の乗馬再教育産業。
それなら競走障害馬の馴致もきちんと丸太跨ぎから始めろよと思わんでもないですが、乗用馬が最後まで全うできるかと言えばそうでもなく、天珠を迎える前に腰や脚を悪くして乗れなくなる馬もそれなりにいる。
そういった馬をどうするのかといえば「どうするんでしょうね」という話になる訳で、「サラブレッドのライフプランは乗用馬になれればOK」という話で終わる風潮には違和感がある。

狭い牛舎で肥育される価格帯の牛にも、山ほど運動を課しつつ広い馬房で育てた馬にも等しく愛情が注がれているわけで、それらを食う事に倫理的に差があるのかもわからない。
もっと言えば、尾てい骨でドッテンと乗る入門者を相手にしながら毎日を馬房で過ごす馬と、バッサリ介錯する馬のどちらが良いのかワシには分かんネ。
経済動物というのは、かくも矛盾に満ちた存在なのである。