海外での騎乗停止制裁に関して

岩田騎手が9月9日のコリアカップで発走後の進路変更ルールに違反し、2日間の騎乗停止処分をを受けました【9月15日(土曜)から9月16日(日曜)】(リンク
その前には川田騎手が8月25日にイギリスで鞭の使用ルールに違反し、4日間の騎乗停止処分を受けています【JRA開催期間外】(リンク
これらの処分は日本中央競馬会競馬施行規程第147条第18号に基づき、現地で課されられた騎乗停止日をそのまま国内でも適用しています。

というのがJRAの発表ですが、補足しておくとIFHA(国際競馬統括機関連盟)の国際協定第10条「失格と停止及びこれらの国際申請」(リンク)で制裁処分に関して一定の共通ルールが定められています。
この協定では

「海外競争に出走した場合、その馬の所有者、調教師、騎手は、その国の競技規則の知識を有し、これらの規則に拘束されることに同意したものとみなされる」

第10条1.2より

と規定されており、JRAのルールに無いからと言って知らぬ存ぜぬは認められません(韓国はこの協定に署名していないため厳密に言うと微妙ですが)

また、この延長線上で、ある主催者が課した騎乗停止に対しては、それを尊重して停止期間を共有する国が多数を占めています。


今回課された制裁は、どちらも日本のルールには無いものです。
こういった事象が起きた際「日本にないルールだから日本で制裁を課す必要はない」と主張する人もいますが、そういった思想には全く賛同できません。

日本からすれば鞭の不正使用による騎乗停止は理解し難いものです。
ただ、日本にも独自のルールはあり、例えば調整ルームの厳しい管理規則は海外から見れば不思議なものでしょう。
もし、短期免許で来日した騎手が調整ルームの規則に違反して1ヶ月の騎乗停止処分が課されたとして、その直後に帰国し母国で騎乗できたとしたら?
自分には到底納得できません。
逆に、日本人が欧州で鞭の騎乗停止を貰っても日本で普通に乗っていたら?
外から見れば納得できないはずです。

これらのルールは欧州の動物保護団体であったり、馬主席にまで入り込んでいたノミ屋・ヤクザの影響だったりと、それぞれの国で抱えている問題や価値観が背景にあります。
そういった部分を国際的に共通化することは不可能でも尊重はする。
むしろ、理解できないし議論できないからこそ尊重をする。
良い悪いというよりも、マナーの問題と言えるかもしれません。

具体例を一つ挙げておきましょう。
2016年にコントレラス騎手が尿検査で禁止薬物であるオキシコドンが検出され1ヶ月の騎乗停止処分が課せられました。
薬物に対する制裁というはまさに国それぞれなのですが、北米の各統括団体はJRAの課した騎乗停止期間を尊重し、その期間の騎乗を認めませんでした。

その国の価値観に合わない物を受け入れるか切り捨てるか。
世界的に人も馬も動きが流動的になる中で、信頼関係を築くのにどちらが良いのか。
自分は切り捨てるような言動を取れる人と仕事したくないですけどね。