ムーア騎手の不服申立てについて

短期免許で来日予定のR.ムーア騎手が11/4のBCターフにて鞭の過剰使用により騎乗停止処分【11/12の実効1日】を受けました。
これにより「エリ女に乗れないやん」という可能性がありましたが、ムーア騎手がHISAに不服申し立てを行ったことにより処分は保留。
エリザベス女王杯のジェラルディーナにも騎乗できることとなりました。

国際協定上の大枠

まずはIFHA(国際競馬統括機関連盟)の国際協定から国際ルールの大枠を頂戴。
国際協定第10条「失格と停止及びこれらの国際申請」(リンク)の中では、不服申し立てのルールも定められており、その中では下記のように定められてます
(本文は回りくどいので適当に意訳)

3.1
不服申立てがなされた場合、その審理と決定が通知されるまでに資格停止処分は開始されるべきではない。
但し、次の場合は除く。
(a) 統括団体が、資格停止者の選択により許可した場合。
(b) 統括団体が指示する場合。ただし、このような指示は、迅速な資格停止が公益にかなうと考えられる状況においてのみ行われる。

という事で、原則として処分対象者は不服申し立ての権利が認められ、その審理中は処分が停止される、というのが協定上のルールとなります。
アメリカはこの協定を批准していない(統括団体の力が弱くてできなかった)のでぶっちぎってもいいのですが、全米統一ルールを管理するHISA(Horseracing Integrity and Safety Authority)ではこれに準じた形でルール作りをしているようです。
ちなみに、JRAが2020年に騎乗停止の開始を1週繰り下げたのもこれが一因でして、

処分の統一的な運用、不服申立てがあった際の十分な審理時間の確保およびルールの国際調和の観点から、騎手に対する騎乗停止処分の始期を現行より一週繰り下げ、原則として翌々節からの発効とします。

と広報文に書かれたのは、建前ではなく大きな要因だったわけです。

ただ、不服申し立てにより停止期間が保留になるといっても、手続きがどのようになされるかは各統括団体次第。
そこで、HISAでは、どのように運用されているのか。
これまでのぼんくらだった北米各州の統括団体と違い、きちんと定義されたルールが検索しやすい形で記載されていたので抜粋して意訳。

(前略)
違反を認定した裁決の裁定は、規則第8350条に記載されている手続きに基づいて、当局の理事会に上訴することができる。
異議申し立ては、裁定を下してから10日以内に書面で行うものとする。

8320. Adjudication of Violations in the Rule 2200 Series

「2日以内に書類と10万円持ってこい」というJRAより良心的
ムチの回数なんて機械的な事象に対して不服申し立てとかあるんか?
という疑問もありますが、出来立てほやほやなHISAでも、既に前例何件かあるようで特異な申し立てではないようです。
30日以内に裁定は出るようですが、少なくともそれまでは保留状態となります。
たぶんどうってことない平日の騎乗停止になるんじゃね?
こういう立ち回りをきちんと把握しておくのも、世界を股にかける騎手(陣営)には必要なんでしょうね。