武藤雅が2日間騎乗停止になった理由を考える

「その裁量どうなっとるんねん、あぁん?」
な事があったら書くのコーナー。

馬は競走中の大半を交差襲歩で走っている。
この時、最後に付く脚が右前脚なら右手前、左前脚なら左手前と呼ぶ。
交差襲歩は推進力が手前脚方向へ斜めに向かっているため、コーナー方向と手前脚を一致させる必要がある。
つまり、左回りのコーナーでは左手前、右回りの右手前で周らなければならない。
もし反手前のままコーナーに入ると、外に膨れたり、無理に周ろうとして減速したりといった事が起きる。
では、コーナリング中に変換して反手前に変えるとどうなるか。
まずは表題の事象を見てみよう

2019年3月10日中山9R:館山特別
武藤雅(セガールモチンモク)
騎乗停止2日(平地調教注意)

残り400付近で左手前に変換、そのまま外へ後続5頭を巻き込みながら逸走した。
こういったコーナリング中に反手前に変換されると推進方向に負けて外へ外へと逸走してしまう事がまま発生する。特にスピードに乗っている4角での手前変換は修正が困難となる。
手前を変えてしまった理由は体力的に厳しくなったとか、物見をしたとかケースバイケースであるが、基本的に騎手責任が問われることは稀である。
過去事象で確認してみよう。

2015年2月8日小倉10R:かささぎ賞
松若風馬(シラユキ)
騎乗停止1日(平地調教再審査)

2016年1月24日中京1R
浜中俊(マーキークラブ)
戒告(1ヶ月出走停止&平地調教再審査)

2017年3月4日小倉2R
加藤祥太(アデュラレッセンス)
騎乗停止1日(1ヶ月出走停止&平地調教再審査)

2017年7月9日福島5R
木幡巧也(ハクサンフエロ)※降着
騎乗停止1日(平地調教再審査)

2017年8月26日小倉2R
小牧太(テイエムリボー)
過怠金5万(平地調教注意)

2018年6月17日阪神10R:灘S
鮫島克駿(ピットボス)
過怠金5万(平地調教注意)

2019年2月23日中山6R
伴啓太(マリノオードリー)
過怠金5万

2019年2月24日小倉6R
松若風馬(ダノンロイヤル)
過怠金1万(平地調教注意)

2019年3月3日中山4R
F.ミナリク(マドラスチェック)
過怠金5万(平地調教注意)


実効1日の騎乗停止は、騎手責任は殆ど無いがレースへの影響度が極めて大きかった事象に課せられることが多い。
正直、そんな停止期間なら戒告でいいじゃねぇかと思うが、中途半端な八方美人がいかにもJRA。

という事は置いといて、裁量は被害馬への影響度で大体比例している。
ラチ際まで逸走して競走中止相当の不利を与えたら1日停止。
被害馬と接戦で降着対象となったのも1日停止。
そこまででなければ5万円。

今回は1頭あたりの不利は5万相当だが、被害馬が多頭数。
それだけに1日停止に振り切れる可能性も否定できなかったが、蓋を開けたら実効2日間

んー・・・なんで?

5万が5頭積み重なって2日停止って事なんですかね?
平地調教注意は5万の事例と共通という事は、その裏付けとして言えるが、それは裁定として正当なのかね。
10万じゃ駄目だったのだろうか

それとも、騎手側の扶助として何かできる要素があったのか?
または、前例の大半は若駒が大半であって古馬の場合には騎手責任が問われるのか?
いずれにしろ、騎手側の扶助に不十分な所があったのか?
手綱を開いて引いて減速修正をしようとしていたが、それ以上に何かできたのか、それとも予測して防げるだけの根拠があるのか?

そうでないのであれば、多頭数の不利でも10万か1日停止に収めておくべきだったのではないだろうか。

たった1日の停止だが、騎手にとっては実に大きい。
また、軽微な過失で2日停止を食らった際、加重制裁対象にならないという面も地味ながら無視できない。
これは不服申立てできると思うが、迷惑をかけた自責で引いちゃうのかなぁ。
類似の前例も多く争点がシンプルで戦いやすい事象だけに、覆すケースを作るチャンスだとも思うのだけど。