JRAのスリーアウト法導入についての一考察

隠れた素質馬が消える可能性

今回の改正で気になるのが、このルールによって後々活躍するであろう馬の可能性を消してしまうことである。
2015年~2017年のスリーアウト馬が後に未勝利勝ちを収めたのは131頭
この数字に対する評価は分かれるだろうが、未勝利勝ちの約4%に当たる割合で、想定する未勝利戦の削減数より少ない。
ちなみにここ10年のスリーアウト馬で、重賞勝ち馬まで出世したのはタツゴウゲキ、ダイメイプリンセス、マイネルバイカぐらい。
この微妙なラインナップも評価が分かれそう。
もう少し集計範囲を広げるとアドマイヤモナークも入ってきて、おそらくこれが出世頭。
やっぱり、意見は分かれそうである。

弱小厩舎にダメ押しを

今回の改革で真っ先に影響を受けるのは、たぶん弱小馬主より弱小調教師
前ページの集計対象となった馬を最も多く管理していたのは誰なのか。
転厩を挟んでの3連敗といったケースもあり正確性に少し欠ける点にご了承をお願いしつつ、
スリーアウト時に該当馬を管理していた調教師トップ20を発表である。

順位 調教師名 所属 頭数
1 伊藤伸一 美浦 39
2 萱野浩二 美浦 32
2 田所秀孝 栗東 32
4 小桧山悟 美浦 30
5 松山将樹 美浦 28
5 石毛善彦 美浦 28
7 森田直行 栗東 27
7 杉浦宏昭 美浦 27
7 石栗龍彦 美浦 27
7 武市康男 美浦 27
11 岩戸孝樹 美浦 26
11 小野次郎 美浦 26
13 加藤和宏 美浦 25
14 坂口正則 栗東 24
14 星野忍 美浦 24
14 天間昭一 美浦 24
14 二ノ宮敬 美浦 24
14 蛯名利弘 美浦 24
19 荒川義之 栗東 23
19 中野栄治 美浦 23
19 粕谷昌央 美浦 23

グロい

全体で見れば美浦:1660 対 栗東:1366とそこまで絶望的な差ではないのだが、上位は見事に並ぶ美浦の文字。
おかえりなさい空き馬房問題。
そして、これがスリーアウトの対象を未勝利とした理由と思われる。
いきなり500万下に適用したら、廃業ラッシュ突入濃厚という訳だ。
まぁ、未勝利への適用だけでもご覧の通りヤバそうな厩舎がズラリと並んでいるが。

ちなみに、集計期間内フル活動している調教師で、最もスリーアウトが少なかったのは加藤征弘師の1頭
純粋なスリーアウトはスピニングスターズだけ。
石坂正師の空振り2回から転厩して三振したロイヤルセレモニーや、盛岡での6着を含めなければスリーアウトのレッドミュールもいるが、これを含めても素晴らしい数字である。

地方競馬の主催者はどう思ってるの?

私的3歳ダート路線整備論でも書いたが、厩舎制度改革は地方競馬に多大な悪影響をもたらした。そして、降級制度廃止も地方競馬に色々な影響を及ぼすだろう。
今回の改正でJRAが馬を減らす姿勢をより明確にしてきている。
それは極々自然な流れであるが、JRAから出された馬の受け皿役にもなる地方側の反応は鈍い。というか反応してる気配がない。
中央落ちの馬が増えるのは、各主催者にとって短期的には歓迎だろうが、長期的にはどうなのか。
その辺の考えが全く見えてこない。たぶん、半分ぐらいの主催者はあまり考えてない。
競走馬資源の確保方法は、NAR所属団体が全体として一定の方向を示すべきというのが私の考え。
団体によって考え方は違うだろうが、泣きつくにしろファイティングポーズを取るにしろJRAに対して明確な姿勢を示すべきだ。
2歳馬たんねーっす、購買補助金だしまーっす、新馬1着賞金に補助だしまーっす。ってお前らはどこまで役人的惰性で走るのか。
2歳馬の確保頭数と2歳競走施行数の目標ぐらい対外的に出して姿勢を明確にせい!

晩成タイプには追い風か向かい風か

厩舎制度改革による弊害の一つとして、晩成型種牡馬の成績に悪影響を与えた点がある。
未勝利・下級条件では優先出走権の確保が重要であり、取りこぼすとスムーズなローテーション構築が困難となる。
元々晩成タイプの種牡馬は勝ち上がり率の低い事が多かったが、この手の種牡馬は得てして叩き良化型が多く、休み明けでも結果が求められる環境は厳しさを増すばかりであった。
今回のスリーアウト制も直接的には逆風である。しかし、条件クラスの除外問題緩和の道筋が明確となった事は、未勝利さえ勝ち上がればローテーションを立てやすくなる事であり、追い風と受け取ることもできる。
はたして、晩成タイプの種牡馬に風はどちらから吹くであろうか。
そして、俺のストーミングホームにもう少しチャンスを頂けないであろうか

登録枠の拡大が何をもたらしたのかもう一度考えてみよう

お陰様でこのシリーズはチョイチョイとリンクを張ってもらえており、定期的にアクセスをもらっている。
でも、一番考えてもらいたい「登録枠の拡大を再評価しよう」があまり見てもらえてない。
21世紀の日本競馬に起きている問題の半分は、ここから始まっていると言って過言ではない。この改革の評価が日本競馬に何をもたらしたのか、それぞれの中で答えを持っておくべきだと思う。
JRAの改正はこの負の遺産を精算することに大半が費やされている。
直球で言えば、高橋政行は○★×△■☆べきである。
もう死んでるけど。


その7.将来トレセンの25%が廃業する事になる(かもしれない)という話
その8.新馬戦の除外ラッシュが長期化するかもね


コメント

  1. GOING-KYO より:

    コメント失礼します。
    低資質の未勝利馬が3アウト回避のため、8頭立て以下の少頭数が予想される500万下にわざと格上挑戦するという抜け穴があると思うのですが、どうお考えでしょうか?

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます

      個人的には全然アリだと思います。
      それでタイムオーバーにならなければ、出走に相応しい馬であるということになりますし、そうでなければタイムオーバーになるだけですから。
      削減が必要な短距離戦に少頭数戦もほとんどありませんし。