ムーア騎手の不服申立てについて

北米のムチルール

せっかくの機会ですので、ここでHISAが定めた鞭の使用ルールをご紹介。
以前は州の統括団体毎に定められてルールが連邦取引委員会の傘下に設立されたHISAによって集約化。
ここで定められたルールがこんな感じ。

ムチの使用法:
(1)レース中、使用できる回数は6回まで。
完歩毎の連打は2発まで、再使用までは2完歩空けなければならない。
(2) 肩ムチは手綱を持った状態で使う事。
(3) 見せムチの使用時に馬体に接触してはいけない。
(4) 馬と騎手の安全を守るためにムチを使用すること。

ムチの禁止事項:
(1) 騎手の手首を頭より上に上げて使用してはいけない
(2) ムチで馬を傷つけたり、鞭打ち、打撲、裂傷などの傷跡を残してはいけない。
(3) 馬の肩または臀部以外の部位に使用してはいけない。
(4) 危険な状況を避けるため、または馬と騎手の安全を守るため以外で、馬場入場時またはレース終了後に使用してはいけない
(5)シンガリ入線時に使用はいけない
(6) 馬が何の反応も示していないにもかかわらず、執拗に使用してはいけない
(7) 2歳4月1日以前の競走で、危険な状況を避けるため、または馬と騎手の安全を守るため以外に使用してはいけない。
(8) 他の馬または騎手に使ってはいけない。
(d)騎手がムチを持たずに騎乗するレースでは、その事実をエントリー時に宣言し、公式プログラムに記載し、パブリック・アドレス・システムでアナウンスしなければならない。

2280. Use of Riding Crop

長々と書いてしまいましたが、基本的にはJRAと同様にIFHAの大枠を踏襲した形ですが、所々アレンジを加えていますね。
今回のムーア騎手は競走中に7発使用してしまい、使用ルール(1)に抵触した形となります。

続いて違反時の制裁について。
項目分けの数字とクラスの数字が異なり嫌がらせのように読みづらい。

違反分類
(1)クラス3違反-1~3回超過。
(2)クラス2の違反-4~9回超過。
(3)クラス1違反-10回以上超過。

(b)裁決が個々の事案について、加重または軽減要因を考慮する必要があると判断しない限り、違反に対する罰則は以下の通りである:

(1) クラス3の違反
(i)250ドルまたは進上金の10%のいずれか高い方
(ii) 最低1日の騎手騎乗停止
(iii) 制裁点3

(2) クラス2の違反
(i)500ドルまたは進上金の20%のいずれか高い方
(ii) 馬の賞金ボッシュート
(iii)騎手は最低3日間の騎乗停止
(iv) 制裁点5

(3) クラス1違反
(i)罰金750ドル、または進上金の30%のいずれか高い方
(ii) 馬の賞金ボッシュート
(iii) 騎手は最低5日間の騎乗停止
(iv) 制裁点10

2282. Riding Crop Violations and Penalties

馬主に対するダメージ大きすぎね?
原文だと「Horse disqualified from purse earnings」ってなってるんですが、賞金没収で間違いないですよね?
今回のムーア騎手は過怠金2万800ドルが話題となっていましたが、これは単に賞金が高いからなだけです(進上金の10%)
欧州だと全額没収の国もありますので、この辺は少々緩め。

ちなみにJRAの過怠金は下級条件からG1まで一律の固定金額なんですが、これって上位レースの方が実質的に裁量が軽くなる逆進性の要素があるんですよね。
世界的には進上金ベースの過怠金が一般的なんですが、JRAは何故か古いまま。
昔の2chで法律上の問題があるとかいう書き込みを見たことがありますが、正直、旧態然とした謎な部分ではあります。