イギリス競馬 ムチ協議会レポートを読む_その1

チラ裏でちょろっと触れていた2021年5月から始まったイギリス競馬界のムチ使用に関する協議会。
当初の予定だと今年の5月には協議結果のレポートが公表される予定でしたが、2ヶ月遅れてやっとこさ公開。

BHA Whip Consultation Report(PDF)

その内容が「そら遅れるわ」って感じの質量を誇るレポートが出てきたので、大枠の内容を訳しつつ触れてみたいと思います。
なお、9割以上は機械翻訳です。
文明の利器は偉大なので誤訳は御免くだせぇ。
あと、適当に要訳してますが、それでも読みづらい上に長いので、そこんとこもよろしゅう。

大枠としてはフォアハンドの禁止と制裁の厳罰化。
そして、端々から溢れるこれで終わりと思うなよ感。

英国におけるムチ使用のセンシティブさが分かると共に、少なからず影響を受けるであろう日本競馬界が、この潮流とどう向き合うかを今から考えておいても損はないでしょう。

とりあえず概要から。
概要と言いつつ、これで大体の内容や空気感は掴めますし、クソ長いです

計画概要

1. 序論と背景

本書は「英国競馬における鞭の使用に関する諮問」の全報告書の要旨である。運営グループは、このテーマに関心をお持ちの方は、勧告だけでなく、その背後にある理由も理解するために、この文書を完全にお読みになることをお勧めします
英国競馬庁(BHA)は、馬福祉委員会(HWB)がその戦略文書「A Life Well Lived(2020)」で行った勧告を受けて、このコンサルテーションを実施しました。
HWBの唯一の明確な勧告は、鞭の誤用に対する罰則を強化する必要性に関連するものです。鞭の悪用に対する罰則を強化すること、そして、鞭の使用に関する会話を業界がよりコントロールできるようにすることです。
また、鞭の使用を奨励するために、業界は鞭の使用に関する会話をよりコントロールする必要があり、オープンな協議を通じて意見を収集することが求められています。

競走馬の福祉で真っ先に槍玉に上がったのが鞭の使用なんだってさ。
この後も度々出てくる「A Life Well Lived」の文章はリンクからどうぞ。
こちらも130ページのボリュームですので、頑張ってください。
ちなみに、この戦略計画は20202024にかけて実施されるもので、鞭使用の見直しもこの中に含まれるものになります。

2. プロジェクトガバナンス

英国競馬協会ウィップコンサルテーションプロジェクト委員会は、BHA理事会により2021年1月に合意された運営グループです。
このグループがこのプロセスで積極的な役割を果たすことを目的としています。
BHA理事会の承認を得るための提言を提出し、このプロセスにおいて積極的な役割を果たすことを目的としています。
運営グループのメンバーは以下の通りです。

– デイビッド・ジョーンズ(議長):BHA独立非常勤理事
– トム・ブレイン: BartonStud最高責任者
– ヘンリー・デイリー:調教師(追注:主に障害)
– セリア・ジバノビッチ:馬主(追注:英国馬主協会理事、元馬術選手)
– トム・ゴフ:ブランドフォード・ブラッドストック共同創設者
– ジョン・ゴスデン:調教師(追注:ご存知ゴスデン師)
– スー・ヘイマン,ヘイマンオブウロック男爵夫人:貴族院議員
– ニール・ハドソン:国会議員、馬獣医外科医、学術関係者
– ニック・ラック:放送作家、ジャーナリスト(追注:競馬番組司会の経験も)
– P.J. マクドナルド:騎手(追注:英国騎手協会共同代表)
– ロリー・オワーズ:ワールド・ホース・ウェルフェア最高経営責任者、獣医外科医
– ジェームズ・サベージ:マイケル・スタウト厩舎の厩舎長
– トム・スクダモア:騎手(追注:英国騎手協会顧問)
– ニック・スミス:アスコット競馬場レーシングディレクター
– スルカ・ヴァルマ:エイントリー競馬場およびカーライル競馬場のコース責任者

追注は私が追加しています。
騎手、調教師、生産者の現場方に加えてレース管理者、獣医、国会議員にジャーナリストと多士済々な面子。
競走面の問題なのに騎手が少なくねぇか?、という疑問が頭を過りますが、イギリスを筆頭とした海外の鞭問題は、そういった性質の問題であるともいえます。

3. 協議形式とプロセス

コンサルテーションプロセスとその後の調査結果の分析を独立した立場で監督するため、BHAは公認の調査コンサ ルタント会社であるトリニティ・マックイーン社に依頼しました。
BHAは、ホースウェルフェア委員会の勧告に従い、オンラインアンケートと6つの独立したフォーカスグループからなるオープンコンサルテーションを実施しました。
オンラインコンサルテーションは2021年7月1日~2021年9月6日まで10週間にわたって実施されました。
コンサルテーション後、BHAのプロジェクトチームは、多くの主要なステークホルダー(組織やグループを代表して回答を提出した人たち)を招き、より詳細なフィードバックについて話し合いました。
コンサルテーションが広く認知されるよう、プロモーション活動が行われました。
このようなプロモーションを行ったにもかかわらず、オンライン・アンケートの回答数は2,147件となり、予想を大幅に下回る結果となりました。

意見公募をしたけど、反応は期待を大幅に下回ったとのこと。
つまり、一般的なバリューではなく活動家にとって旨味の少ないテーマになりつつあると言えるかもしれません。
なんかこの後もゲスい解説ばかりになりそうな予感。
まぁ、少ないと言っても2000件ですからねぇ。英国的な感覚は分かりませんが。

4. 規制の背景

英国競馬における鞭の規制に関する詳細な背景は、本文の第2章に記載されています。
英国レースで使用される鞭は、厚い発泡体パッドで覆われた複合脊椎からなるエネルギー吸収型です。
レースでは、主に次の3つの目的で使用されます。
目的
– 馬と騎手の安全確保
– レースの終盤や障害物を跳ぶときなどの補正と集中力。安全性を高める、または奮起させるため。
– 奮起
馬を活性化させ、レースでベストを尽くし、その潜在能力を発揮させるための補助として。

英国における鞭のルールと罰則に関するBHAの最後の重要な見直しは、2011年に発表された。
その結果、鞭の使用回数に制限が設けられた。
レースで使用できる鞭の回数に制限が設けられたことが大きな特徴です。

後々の記述にも出てきますが、この協議会では、競走の安全を確保するための鞭使用と、馬を走らせるのための鞭(原文では「whip for encouragement」。ここではジャパンスタッドブックの訳に合わせて「奮起させるための鞭」としてます)の使用は区別して考えられています。
「鞭を使用した段階で両方の性質を持ち合わせた扶助になるだろうが」とかいう真っ当な反論はおやめください。


コメント

  1. 名無し より:

    鞭のルールの国際的な調和は、回答者の大多数によって望ましいと考えられていた。

    majorityはあくまで過半数であって、大多数ではありません。
    イギリスだけ厳しくして競技性が低くなったり、
    規制の強さで国内外から良い馬が参加しなくなるのは問題である。
    世界ではルールも運営も異なるから、せめて隣国のアイルランドやフランスとは
    議論して近いルールにはしておきたい。
    その役割はBHAが担っていくべき。

    ということです。

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます。

      翻訳に関しては、バシバシ指摘くだされ。
      そんな感じで近隣国間で収まってくれれば良いんですけどねぇ。
      頼むからIFHAのテーブルに乗っけてくれるなよと。