降着関連で色々あったね、という話

降着と裁量の問題点

現在、降着事象に対する制裁は落馬事象と同等の扱いがなされています。
つまり、騎手が誘導しての降着事象ならたとえ動きが小さくても騎乗停止実効4日間。
馬の問題が認められて調教注意処分が重なれば騎乗停止2日間。
重大な馬の問題で調教再審査となれば1日だけ騎乗停止処分です。

「被害馬の影響度が降着基準(カテゴリー2)」であればこの運用で問題ないのですが、カテゴリー1の降着基準ではひとつ大きな問題が生じます。

事象発生直後に修正して被害馬と併走状態で入線するよりも、キッチリ妨害して着差を付けた方が降着の可能性が減るだけでなく、裁量も軽くなる可能性があるのです。

2019年5月11日:京都5R(降着+騎乗停止4日間)
修正して着差がクビ差に収まった結果降着するよりも

2019年2月10日:小倉4R(過怠金5万円)
妨害し続けて半馬身以上の着差の方が

2019年5月11日:京都8R(過怠金5万円)
お得になる可能性があるよ!

以前のエントリーで「中途半端な進路変更や寄せ方は降着の可能性があるので、ゴール前の斜行は大胆かつ強引に相手の勢いを確実に削ぐように乗るのが良い」と書きましたが、その認識は今も変わりません。
ラプターゲイルの柴田大知ダイリュウボーラーの森裕太朗は、降着が無ければ3万~5万程度の過怠金です。
さらに言えば、戒告程度の事象でも降着となる可能性はありますし、そうなれば騎乗停止は避けられません。
現状の降着基準が妥当かどうかは置いといて、被害の影響を抑えた方があらゆる面で不利になる可能性のある裁量基準は今すぐにでも改めるべきです。
「現在の基準がラフプレーを増長させる」という意見を否定する材料を私は持っていません。

香港の例

この降着基準を世界に広める旗振り役を担ったのはルール委員会の議長である香港競馬と見ていますが、その香港ではどのようになっているのでしょうか。
ひとつ参考事例を出しておきましょう。

2018年10月7日:シャティン2R

この競争では、先頭争いで外から差し切ったLET US WINがDIAMOND FRIENDSに寄せすぎて妨害したという判定で降着処分が課せられました。
日本であれば加害馬に騎乗していた騎手に騎乗停止4日が課せられる所ですが、この件のA.サンナ騎手に課せられたのは戒告処分(severely reprimanded:けん責?)でした。
武豊のあれが2日停止でこれが戒告なのか?」という疑問はありますが、少なくとも香港の場合には降着と裁量の切り分けが確認できており、カテゴリー1の性質を考えるとそれが自然だと思います。
むしろJRAはそこを合わせろよ。