岡田繁幸が好きだ

岡田繁幸が好きだ

総帥墜つ

この人は色々な面から評しないといけないのだが、思いつくままアトランダムに。

育成に革命を起こした人だった。
カントリー牧場のように1歳、2歳の段階から豊富な運動量を課す者もいるにはいたが、世代単位で成功を収め、若駒育成における明確な指針を作った事は何よりも評価されて然るべきだろう。
体さえ大丈夫な事をきちんと見極めた上で判断すれば、育成段階から坂路で15-15というハードな調教も許される。
それを証明してみせたのが2004年のクラシックシーズンであり、海外と比べて明確に遅れを取っていた育成段階の意識を変え、日本競馬の時計を進める事に成功した。
これは、多数の種牡馬を導入した事やコスモバルクといった馬を送り出したことよりも評価されるべき事だろう。

相馬に優れた人だった。
日本一の相馬師とも言われていたが、そこまでではないと思う
とか言ったら怒られそうだが、サンデーサイレンスの見分けの下手さは否定できない。
カームという象徴的存在を除いても、サンデーの世代が下がった現代においてもサンデー系の取捨はお世辞にも的確とは言えなかった。
高馬相手だと目が曇る説もあるが、マル外の高馬ではマイネルラヴという大当たりも含めきちんと買いきっているので、やはりサンデー系に対する評価基準に何らかしらの問題があったのだろう。
サンデー自体、導入時の馬体に対する評判は酷かったわけで自身の相馬基準とは相性が悪かったのか、それとも単に基準の切り替えが下手だったのか、はたまた生産馬も一息なのを考えれば育成手法との相性が悪かったのか。
ひっくり返せば、サンデー直系以外なら日本一だったとは言えるかもしれない。

発信力に優れた人だった。
プレイアンドリアルの調教で「アルゼンチン方式だ」とか訳わからんハッタリをぶちかますのを初めとして、言い切る姿勢は実に清々しい。
また、単に弁が立つだけでなく、やり方もうまかった。
毎年恒例の英ダービー登録を筆頭にメディアを実に上手く使っていた。
登録費は微々たるもので、募集の謳い文句にもなるしマスコミ媒体にも記事が載れば、費用対効果で山程お釣りが来る。
ただ、英ダービーに登録して山程アドバルーンを上げたマイネルエテルネルを小倉1200で下ろすってのはさすがに大概。
英ダービーに対する本気度はそれぐらいではあったと自分は判断するが、どんな時も風呂敷の広げ方に可愛げが残る人で、それが何とも言えない味でもあった。

ビッグレッドファームが第一な人だった。
当時コスモバルクを筆頭にクラシックを席巻し我が世の春を謳歌するビッグレッド軍団とは対象的に、馬券の売り上げの減少が止まらず地方競馬の廃止ラッシュも重なり競馬産業全体は右肩下がりだった2004年。
日本に突如やってきた黒船がゴドルフィンであった。
死に体の牧場を買い上げて日本の生産業に参入し、馬主としても活動しようとするも照哉と繁幸が猛反発。
「外国資本はJRAの高い賞金を狙ってやってくると日本の馬産は死ぬ」というのが大枠の主張だったが、当時の日高は何もしなけりゃ死んでいく、という状態であり、とにかく買い手を求めていた。
海外資本は、その貴重な買い手となる可能性もあったが、岡田繁幸はその点を徹底的に無視して海外資本を叩き潰そうとした。
その上、「会員に安価で良い馬を提供できなくなる」と書いたのは最低であった。
日高の価格が安けりゃあんたは良いが、それで苦しむのは生産者側である。
結局の所、最も忠実に立ち回ったのはビッグレッドファームに対してであった。
これは大多数の調教師にも通じることだが、「競馬界のため~」とか「ファンのため~」という枕詞を置きながら、自らの利害を排した意見が出てくることは極めて少ない。
経営者として実に正しい姿であるが、受け取る側はそれを認識した上で処理しなければならない。
岡田繁幸という人の言葉も、その範疇に収まるというだけの事である。

一代記で築いた人だった。
以前にも書いたが、歴史とか伝統とか言われる牧場も隆盛は基本的に一代ポッキリ。
メジロは北野豊吉の、シンボリは和田共弘の、ウィンドフィールズはE.P.テイラーの一代記だ。
社台の吉田一族は稀な例外であり、大きくなった牧場を凡庸な才で支えるのは困難となる。
ビッグレッドFも名義は息子に譲っており、スタリオンパレードでの父と息子の漫才のようなやりとりも有名であるが、果たしてその才はどこまで引き継がれているのか。
育成面は積極的に情報公開した分、その先進性は既に無く、むしろ馴致やスタッフ育成で出遅れを感じる部分が少なくない。
数年前まで曳綱を犬の散歩のような長く持ったりしゃくる人間が残っていたし、多少改善された現在でも、社台SSとビッグレッドFのスタリオンパレードでは、引き手のレベル差がハッキリと出ている。
これは実戦でも言える事で、数年前までビッグレッドの馬は抑えようとした時に頭をカツンと跳ね上げる馬が少なからず見られた。
これは調教の問題というよりも、馬鹿みたいにしゃくる人間がいるんだろうと想像させる所で、上に挙げたプレイアンドリアルの折り合い問題も、んなハッタリかます前に馴致段階できちんとコンタクトを築いとけ、という話でもある。
そういった細かい問題は岡田繁幸という人の才が凌駕してきた部分であるが、息子の岡田紘和はどこまで立ち向かえるのか。
個人的には10年持てば上々、20年後はどうだろね。
という予想が素直なところである。

最後に。
北海道で一番仲の悪い岡田牧雄との兄弟関係はぶっちゃけどうだったのよ。
何がきっかけだったのか、それとも積み重ねだったのか。
念願のクラシック制覇であっさり追い抜かれた本心の程はどうだったのだろうか。
まぁ、これは分からずじまいの方がいい話なのかもしれませんがね。