降級制度を廃止する理由と疑問

降級制度は何のため?

元々、降級制度は限られた馬資源を有効活用するものであった。
「昔は生産頭数が少なく~」とも言われるが、アラブ系も含めた軽種馬の生産頭数は1966年5000頭、1974年には1万頭を超え、サラブレッドだけでも8000頭前後と生産数そのものは現在より多い。
しかし、昭和の中頃までJRAと地方の賞金格差は小さく(例・1972年新馬戦の1着賞金は大井120万、JRA180万円)競走馬資源を取り合いが激しかったため、JRAに入ってくる数が十分とはいえない状況であった。
この少ない馬資源を有効活用しようというのがクラス編成制度であり、降級制度である。

勝利を収め昇級した馬の多くは、強い相手に成績が頭打ち。
成績が頭打ちになれば賞金を稼げず、引退となってしまう。
競走馬資源が限られている中で、JRAとしてはできるだけ長く1頭の馬に現役を続けてもらいたい。
降級制度は、そういった成績が頭打ちの馬が下のクラスへ降りて再度賞金が稼げるようにして競走寿命を伸ばす狙いがあった。

1970年代、JRAのクラス編成は未勝利、400万、800万、1300万、1800万、オープンと現在より1区分細かく分けられおり、降級も4歳夏に加え5歳夏にも行われていた。
これらは全て1頭の馬をできるだけ長く現役馬として留めておくためである。


※軽種馬の生産頭数(日本軽種馬協会・生産頭数統計より)


※中央・地方の在籍頭数(農林水産省・馬関連資料)
※JRAは1月1日時点、地方競馬は「登録馬主及び登録馬に関する統計資料」より
■JRAの数字は前年の未勝利馬が抹消した後のタイミングなので、ピーク時より数%少ない数字なのを留意

競走馬資源の増加

このように、昭和の中頃までJRAと地方の差はそれ程大きなものではなかったが、ハイセイコーの登場による第1次競馬ブームからJRAの成長が加速。地方競馬の売上も伸びていたもののJRAからは劣るもので、賞金格差もじわりじわりと拡大。
また、馬の管理も手狭な競馬場から広大なトレーニングセンター(開場栗東1969年・美浦1978年)へ移り馬房が潤沢となったのも追い風となりJRAに入厩する馬も右肩上がりに増加していた。
そして、入ってくる競争馬が増えれば、今度は出ていく競走馬を増やす必要性が出てくる。
JRAは競走馬の入れ替えを促すため、クラス制度と降級制度の改正を段階的に行っている。
クラス制は1984年に1800万下条件が廃止され、降級制度も88年に5歳夏の降級が廃止、降級は4歳夏の一回のみに改められた。

しかし、これらのルール改正によって競走馬の入れ替えを促していても、入厩希望は経済の紆余曲折も乗り越え右肩上がりに増加。
潤沢だった馬房も限界を超え入厩枠の需給は逼迫化し、JRAはさらなる改革の必要性が迫られていた・・・。


コメント

  1. ななし より:

    >その一面が、現在まで続く除外ラッシュである。

    言いたいことはわかりますが、未勝利と500万下の除外ラッシュは1990年代前半には既に競馬雑誌などで問題視されていました。
    2000年代にメリットシステム制が開始されるずっと前から未勝利と500万下は除外だらけでした。
    その結果、JRA所属馬の出走機会を確保するため、JRA交流競走が1994年から始まりました。

  2. ななし より:

    そもそも新馬・未勝利のフルゲート増加は未勝利戦終了時期の繰り上げ(昔は11月の福島開催までで、今は夏の小倉・新潟開催で終了)やJRA交流未勝利戦の減少(これはJRAの予算削減や地方競馬の廃止が原因)なども原因となっているので、一概に管理頭数の増加のみが原因とは言い切れない部分がある。

    この記事では全く触れられないけど、除外ラッシュの一番の原因は外厩の充実でしょう。
    昔は外厩がほとんどなかったから、休養明けの馬など、馬房にいてもすぐに使えない馬が一定数いたけど、今はそんな馬は馬房に置かない。
    外厩がほとんどなく、すぐに使えない馬が馬房にいた時代ですら除外だらけだったので、2000年代初めに管理枠を増やさなくても、地方競馬からの出戻りを条件を緩和しなくても結果は同じだったと思う。

    JRAには競馬法改正して1日12R制限を撤廃するという考えはないのかな?
    除外問題を一気に解決する名案だと思うのだが。

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます。

      まぁ、それに対する回答は続編に長々と書いてますのでそちらを見てもらえればよいかと思います。
      簡単に言えば預託枠拡大以前と以後では問題のレベルが違う。
      そんな感じで結論の部分は全くもって同意ですが、その過程に関してはちょっと同意しかねます。
      なぜ外厩が発展したかの理由も含め。