地方競馬の開催上限
2ページ目ですが、結論のお時間です。
競馬法施行規則では開催日数の上限が定められており、JRAはここに書かれた288日という枷に20年以上も苦しめられています。
登録枠の拡大により急増した出走需要に対して、競走供給の拡大を行えなかったのはこの部分を改正できなかった事が全ての根本になります。
生産頭数の増加に対する受け皿としてJRAは役目を果たすことは出来ませんが、果たして地方競馬はどうなのか。
地方競馬においても同規則で開催数の上限が定められてますが、JRAとは別項目で下記のように記載されています。
第二章 地方競馬 (開催の範囲及び日取り)第二十九条 法第二十条第一項の農林水産省令で定める範囲は、次のとおりとする。
一 都道府県の区域ごとの年間開催回数(毎年四月一日から翌年三月三十一日までに開催される回数をいう。以下同じ。)については、別表第一の上欄に掲げる都道府県の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる回数二 一回の開催日数については、六日(天災地変その他都道府県又は指定市町村の責めに帰すことのできない理由により開催日において予定された一日の競走回数の二分の一以上の競走を実施することができないときは、六日に当該開催日の日数を加えた日数)~中略~別表第一(第二十九条関係)
都道府県 年間開催回数 北海道 43回 兵庫 29回 愛知 28回 岩手、東京、石川、
岐阜、佐賀21回 高知 19回 神奈川 15回 埼玉、千葉 13回 その他の府県 4回 ~中略~
4 都道府県又は指定市町村は、当分の間、次に掲げる事業が円滑に実施されるために必要な資金を確保するための競馬(以下「特別競馬」という。)を開催することができる。この場合において、当該特別競馬を開催する都道府県の区域(当該特別競馬を開催する者が指定市町村である場合にあつては、当該指定市町村の区域を包括する都道府県の区域)の年間開催回数については、当該特別競馬の開催回数が別表第一の下欄に掲げる回数に追加されたものとみなす。一 競馬場の施設又は周辺環境の改善事業二 国際博覧会その他高度の公益性を有する事業 5 前項の規定により開催することができる特別競馬の都道府県の区域ごとの年間開催回数は三回以内とする。
という事で、JRAと異なり微妙に強弱のついた形で開催回数の上限が定められています。
北海道の回数が突出していますが、これは帯広ばんえい競馬の分も含まれているためです。
この別表第一で定められた開催回数×6日が基本的な開催日数の上限となる訳ですが、実際にどの程度消化されているのか。
2021年度の実績で見てみましょう。
競馬場 | 上限開催日数 | 実開催日数 | 余剰日数 |
---|---|---|---|
北海道 | 258 | 232 | 26 |
岩手 | 126 | 129 | -3 |
大井 | 126 | 98 | 28 |
浦和 | 78 | 58 | 20 |
船橋 | 78 | 60 | 18 |
川崎 | 90 | 65 | 25 |
名古屋 | 168 | 110 | 58 |
笠松 | 126 | 92 | 34 |
金沢 | 126 | 88 | 38 |
兵庫 | 174 | 163 | 11 |
高知 | 114 | 110 | 4 |
佐賀 | 126 | 114 | 12 |
※色々あった笠松・名古屋は2020年度の数字
一部の地区を除いて開催日数には十分余裕がありました。
さらに、これとは別に特別開催を3回追加することができるので、競走数の余裕はこの表以上にあるわけですね。
ちなみに岩手が超過しているのは、この特別開催の分です。
もちろん、余剰分をどこまで投入できるかは場所ごとに差があるでしょうが、お国のお偉方を通す必要がない事は大きな違いです。
生産頭数の増加分を吸収できる競走供給の余裕は十二分にあるといえるでしょう。
めでたしめでたし。
とも言い切れないわけでして。
低下する出走率
近年は、各場共通で出走頭数が増加している一方で、出走回数は頭打ちという現象が一部で発生しており、全体でまとめると2021年の出走回数は前年から減少してしまいました。
※廃止された宇都宮、旭川、札幌開催、荒尾、福山の数字を含む
※アラブ馬の数字を含む
※JRA所属馬の出走データ除外
2021年の数字が減った原因の半分以上は笠松のせいなのですが、1頭あたりの出走回数は全国共通で減少傾向を示しており、決して無視できない数字です。
一見すると、頭数の増加に競走数が追いついていないようにも見えますが、一部では1日12Rのフル編成が減少、つまり出走枠が余る現象が見られており、単なる競走供給の問題ではない可能性が示されています。
一部では賞金の回復で間隔を開けて出走する馬が増えて馬房毎の出走率が減少してると言えるでしょうし、別の一部では競馬場の馬房外で待機している馬が増加していると言えます。
全国を強引にまとめるとすれば、SNSで散見される馬房の確保が難しくなっているという意見が、数字にも現れているといえるでしょう。
この状況からさらに登録頭数が増えるとなると、各地の地方競馬でJRAのような外厩待機の馬が増える可能性が高い。
馬主は地方なのに外厩塩漬け状態は避けたいはずですし、主催者的にも馬房毎の出走率が下がり馬はいるのに出走馬の確保ができない意味不明な状況は御免被りたい所。
考えられる対策は実にシンプルで馬房と人の確保という事になる訳ですが、これをどう実現するかは、やはり地域差が相当にありそうな感じ。
そもそも、馬房の前に競走数の確保を優先したい所もありますので、全国一括りにはできない話。
とりあえずは、大多数が適当になっている入退厩管理をきちんと取る事から始めて、馬房の稼働率や出走需要を出した上で落とし所を探るのが全国共通の正道かと思います。
そもそも競馬場馬房での休養馬もどれくらいいるのかすら分からないですし、そもそも抹消馬の管理も大雑把ですので、とりあえず月1ぐらいでは各場共通で数字を出していかないと落とし所を見誤るかと思います。
つまり、高橋政行を反面教師にすればいいって事です。
NARの運営指針にも入退厩管理の厳格化は書いてますので、やってくれるとは思いますが。
ついでに無責任な立場から言えば、認定馬房を大幅に拡大するチャンスに見えるんですがどうなんでしょうかね。
外の方がいい施設があるor作れる、というのもそうですし、主催がハードを抱えないのは分かりやすいリスクヘッジになりますし。
当然、言うは易しなのは確かなんですが、割りと1年ぐらいの短期間でバッサリ方向性を示さないと状況が厳しくなりますので、夢見る交流重賞だけでなく足元の需給も見定めていただきたいものです。
以上、本題終わり。