豪腕が好きだ

その1:トントン乗りが好きだ
その2:ムツゴロウさんが好きだ
その3:藤田伸二が好きだ
その4:脚で動かす考え方も好きだ
その5:やきそば乗りが好きだ
その6:鈍い馬が好きだ
その7:蛯名正義が好きだ
その8:幸英明が好きだ
おまけ:豪腕が好きだ(いまここ)

スリーポイント(トントン乗り)に関してなにか書き忘れたことがあるなぁ、というのを今更思い出したので、1節追加してみる。

馬に乗ったことがない、もしくは馬のことをよく分かってない人間を見分けられる言葉の一つに「豪腕」という言葉がある。

武豊「500kgもある身体を人間の腕で動かせるわけ無いでしょ(笑)」

なんて言葉を借りる必要もなく、腕力によって馬が半馬身、1馬身と伸びていくなんて事は無理だ。
安藤勝己や小牧太といった地方騎手が中央に参戦し成績を残し始めた頃「地方騎手の【豪腕】は~」なんて事がよく言われていたが、彼らがJRAの騎手と明確に異なったのは、腕力ではなく長めの鐙でゴリゴリ動かす脚扶助の意識だ。
ところが、馬に乗ったことのない評論家だけでなく、誰とは言わないが本職である元JRA騎手まで「外人騎手の豪腕が~」なんて言う人もいるのだから質が悪い。
馬を抑えるのに腕力と握力は相当に必要だし、そこに違いを見せる外人騎手はいる。ただし、スパートで体を伸長させるのと騎手の腕力は別問題だ。

パイオニアとなった彼らは次第にJRA馬、特に芝のレースではそこまで強い扶助はいらないと次第に鐙を上げてシンプルに乗るようになるのだが、地方の豪腕という人はその辺に関して今も昔も無頓着なのだろう。
地方や外人騎手が最後の勝負所で脚をハンマーのようにブンブン振り回すように脚を入れたり、通常よりも引いて脚を入れてるのに注目してほしい。
そして影響されて真似てるJRAの騎手が多い事は、さらに注目してほしい。その中には形だけ真似てる者もいれば、意図を理解して取り入れてる騎手もいる。

佐藤哲三騎手の「馬を弾く感覚」という表現は、豪腕を駆逐する勢いで広まって然るべきだろう。
馬の頭を下げさせるのも、上から押し付けるのではなく引いた反動で下げさせる方が自然だ。
手綱で力を溜めるのは、自分みたいな下手くそでも意識する馬乗りとしての基本である。
豪腕という言葉を使う人はその理屈を考えてみた方がいい。
彼らは、ファロンのように手綱は引くだけ、脚でガリゴリ馬を動かす究極レベルのおっさんも豪腕と呼ぶのだろうか。


あ、でも評論家の信頼性のわかりやすい指標だから、豪腕って残すべきかもしれない。
馬って人間の腕力でも前に進むんだよ。知らんけど。