私的3歳ダート路線整備論

地方競馬の憂鬱

2000年の厩舎制度改革以降、JRAに入厩しデビューする馬は低下を続ける生産頭数とは反比例するように増加を続けている。

預託枠の拡大によりJRAに預けたい馬を預けられるようになった結果な訳だが、そのしわ寄せは地方競馬に影響を与えている。
2001年に始まった地方競馬の廃止ラッシュにより主催者数は半減したが、血統登録数からJRAデビュー数を引いた頭数は4割弱まで落ち込んでいる。

競走馬資源の減少は各地で空き馬房問題を招き、またデビュー頭数の減少は地方競馬のレース編成、特に2歳・3歳戦に影響を与えている。
まずは南関の2歳未出走馬の出走頭数を見てみよう。

1999年 2017年
大井 326頭(40競争) 244頭(33競争)
船橋 174頭(22競争) 116頭(17競争)
川崎 175頭(22競争) 109頭(17競争)
浦和 136頭(19競争) 87頭(13競争)

調べるのが手作業なので多少の誤りはあるだろうが、99年と2017年だけの比較でも純粋な南関デビュー数が3割ほど減っているのがわかるだろう。
その他の地方競馬場でも推移は似たようなもので、どこも頭数の減少により2歳戦の施行数を減らしている。

また、2歳戦の総本山であるホッカイドウ競馬も2歳馬の減少が進行しており、当初発表されていた2歳馬概定番組表から、6月21日段階で10のチャレンジ競争が無かった事にされている。
消化率は昨年と同じぐらいだから・・・ってそれではアカンのである。

※2018/11/30追記
最終的には概定320R、実施263Rで消化率約82%。
2017年実施の303Rからは、約14%の減少となりました。
北海道胆振東部地震という大きな出来事がありましたが、
地震前の9月6日までも概定206R、実施176Rと消化率に大差はなく厳しい数字が出ています。

もちろん各主催者も手をこまねいている訳でなく、新馬・セリ馬の購入補助、預託費の補助、賞金の補助、etc…
といった手段を手当たり次第に打っている。
愛知県馬主協会の作成した一枚資料がわかりやすいが(リンク)、若駒を確保するための施策が各地でてんこ盛り。JRAからの転厩馬に対しても補助金を出している所もあり、まさになりふり構わぬ姿勢である。
また、この表以外にも地方競馬全国協会(以下NAR)からも賞金補助が出ており、新馬戦の賞金補助を受けた結果、一部の競馬場では「その日の最高賞金競争が5頭立ての新馬戦」という光景が繰り広げられている。

では、これらの施策が効果を上げているかと言えば、先に挙げたグラフの通り劇的な回復を呼び込むには至っていない。というより、未だに底が見えていない。
その原因として、賞金と生産頭数の回復が遅いという事もあるだろうが、多くの馬がとりあえずJRAに入る流れが形成された事も一因だ。

信頼できる人脈の少ない中小馬主にとっては、トレセンの施設は外厩でもあり、勝てなくても一定期間そこで鍛えれば、地方の競馬場調教よりも効果が見込める。
また、JRAの競争は体のいいクレーミング競争であり「未勝利でこれだけ走れたからこの競馬場」といった感じで素人の馬見よりよっぽど正確な値踏みができるのも都合がいい。
そして、これらの流れをJRAによる十分な手当て付きで行えるのである。
この流れを覆すのは、単なる賞金の拡充だけで解決できるとは思えない。
地方の回復した賞金を懐に入れるのは古馬になってからでも十分なのだから。


介錯は待ってくれ

地方がそんな状況の中、JRAで若駒ダート路線の整備がなされたらどうなるのか。
地方の賞金を狙って入れるレベルの馬も中央に集まる流れがさらに加速する、というのが自然な流れだろう。
水は上から下へ流れるのである。
90年代までは、水の量も多く上の受け皿も小さかったため下にも十分に流れてきたが、水の量が減り上の受け皿が大きくなれば自然と下への流れは滞るようになった。
その受け皿を更に大きくすればどうなるか。
容易に想像できる所である。

「東京ダービーだけを狙っての移籍は悪だ、そういった馬を出さないためにもJRAのダート路線を整備しろ」という声は一見理にかなっているが、地方側からしたら正義面した迷惑野郎でもある。
現状は新馬のみならずJRAの未勝利馬に対しても補助を出すほど若駒集めに困窮している。
少なくとも生産頭数が回復するとか、NARの繰り出す施策が奇跡的に大当たりして新馬の供給数が劇的に回復するまで路線整備は待ってくれ、というのが地方側の素直な言い分であろう。

地方競馬の若駒路線は座して死を待つ状況であるが、介錯するのはもう少し待って頂きたいのである。


コメント

  1. ペルノ より:

    2歳3歳のダート路線拡大も冬から春の障害重賞(6競走程度)から回せば予算も問題無い。

    地方は新馬戦は諦めて(もう新馬の入る厩舎も限られてるし)、負け戦の3歳路線からで仕方ないね。

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます

      障害を削るのはやめてぇぇぇぇ

      という個人的な感情は置いといて、
      地方もそう割り切ってしまえば話は早いんですけどね。
      現状では中途半端に抵抗してるのがなんとも煮え切らない。
      2歳戦の賞金が完全に浮いてるけど、JRAに抗するには足りないという。
      そういう意味で、JRAがバッサリ介錯するのもありなのかもしれませんが。