事象の短評で「所謂、内ラチ1頭分ルール」なんて言葉が時々出てくる。
こちらで勝手に作った造語なので現場レベルでどう呼ばれているのか分からないが、制裁において内ラチ1頭分のスペースは特殊な扱いがなされている。
という事でGWの暇潰し向けに、このルールに関するちょっとした解説を。
「内ラチ1頭分は安全域である」
というそれまで聞いたことの無いルールが公に出てきたのは2010年の三浦皇成9頭落馬事故での事。
この件に関しては騎手責任も含め様々な意見が出てきたが、その中で裁決の見解としてこんな記事が世間に流れていた。
スポニチ2010年1月12日より(Webアーカイブリンク)
JRAは三浦に16日から24日まで開催日4日間の騎乗停止処分を下した。馬の癖(へき)であれば騎乗停止1日だが、三浦に責任ありとして、他馬の進路を妨害した場合の一般的な制裁期間を科した。中村嘉宏・審判部部長補佐は「三浦騎手は馬をラチに近づけすぎた。全馬が経験のない新馬戦であり、もう少しラチとの間隔をとるなど、違う乗り方があったのではないか」と、三浦に安全意識が希薄であったことを理由に挙げた。「(予測できない馬の動きに備え)内側に安全域として1頭分くらい空けておくよう普段から教育している」とも明かした。
おい、そんなの聞いたこと無いぞ。
日本はインコースが簡単に開くという話は腐るほど聞いたが、そもそも1頭分空けるのがルール?
なんじゃそりゃ。
現役騎手も含め、この見解に対して様々な記事が出てきたが、結局はうやむやなまま消費されただけでお終い。
世間とはそういうものであるが、こういう話を頭の片隅に置いといて損はない。
制裁をまとめて分かったことは、内ラチ1頭分が安全域という扱いは制裁上でも確認できるという事である。
・内ラチ1頭分を利用しての追い抜きは制裁対象
内ラチ1頭分空けて走る先行馬に対し、そのスペースを利用しての追い抜きは制裁対象となる。
一見すると内を空けている先行馬が悪いとも言われるが、JRAでこの進路を通っての追い抜きと制裁対象となる。
間違われやすいのだが、ラチ沿いを走行しているだけなら制裁対象とはならない。
あくまで追い抜こうとした場合が制裁対象。
でも、制裁にならなくても色々と不利な面がある。
・内ラチ1頭分を利用して追い抜こうとしている馬に対しては何をしても良い
目には目を
暴力には暴力を
村の掟を破った者は、村人から制裁を受けるのである。
ラチ沿いを通って追い抜こうとした際に、進路を絞られて大きく後退したり落馬したり。
一見すると絞った側が悪質に見えるが、制裁対象は絞られた側。
JRAでは無法者に対する私刑が許されている。
なおこの件に限らず全体的な傾向として、JRAでは走行妨害に対してある程度の反撃が許されている所が見受けられる。
喧嘩両成敗ではなく、先に手を出したものが悪いという考え方か。
・内ラチ1頭分を走行中に受けた妨害は見た目より裁量が軽くなる(事がある)
ラチ沿いを走行中に受けた妨害は、ラチと接触して見た目にも大きな事象となりがちだが、加害側の裁量は見た目より小さい制裁で収まることも多い。
ラチ沿いを通っている側にも不利が大きくなった責任があるという事なのだろう。
【2017年10月22日:新潟8R(戒告)】
【2018年1月6日:京都5R(戒告)】
今年の高松宮記念でも藤田菜七子のスノードラゴンがラチ沿いで大きくバランスを崩した事に対して憤慨している人も多くいたが、北村友一の過怠金10万に藤田菜七子の部分が含まれているかはかなり微妙なところである。
流れの中のやり取りもあるが、ラチ沿いに自ら入った段階で負け。
これを表に書いたらめんどくさい人が寄ってきそうなので裏に書いていたが、時間も経ったしそろそろ大丈夫かな?
コメント
面白い記事です。高速の路肩みたいな扱いかな?
故障した馬や垂れた逃げ馬はその内ラチ1頭分を通って後退していくのでしょうか?
コメントありがとうございます。
まさに高速の路肩のようなものです。裁量のレベル的にもそのまんま。
仰る通り基本は後退用のスペースと考えて良いと思います。
あとは、左右の動きで押し込まれる時に事故が起きないように残しておく余白的なものと。