降級廃止にも対応できる優先出走順位改革案

降級廃止問題と除外ラッシュ問題とダート路線問題が繋がっている事を書いてきたが
「てめぇは文句だけ付けて、何も案は出さねぇのかよ」
というご不満にお答えして、競走馬の供給過剰に対する自分なりの対策案を出して、このシリーズを一旦締めたいと思う。

これまで通り前記事を見てない人は、先にそちらを見るのを推奨である

その1.降級制度を廃止する理由とその疑問 
その2.降級廃止が招く混乱の可能性
その3.登録枠の拡大を再評価しよう
その4.私的3歳ダート路線整備論

タイムオーバーでは不十分?

現在500万下と1000万下で導入されている優先出走権は、好走馬に対する優遇措置だが、登録抹消の推進には効果が得られていない。
登録抹消を促すには、対象を凡走馬に絞ってそれを冷遇するような施策が必要だ。

現在でもそのための施策としてタイムオーバー制度が存在しているが、近年は出走頭数と反比例するように対象馬が減少傾向にある。
以前に書いたエントリーでは、この基準を厳しくして抹消を促すのはどうだろうか?
といった事を書いてみた。

しかし、よくよく考えてみるとタイムオーバーを嫌う馬が増えればスローペースの増加に繋がりかねず、一発の大凡走で出走停止も厳しい話。
という事で、今回は違う案を考えてみよう。

※レコード決着や故障、走行妨害等で免除される事もあるので、実数は少ないヨ。

スリーアウト法

人は失敗する生き物である。
馬も失敗する生き物である。
一度の失敗を咎めるタイムオーバー制度は心の余裕に欠ける現代社会の負の象徴とも言える。

失敗したっていいじゃないか。
玉砕的に逃げて大敗したっていいじゃないか。
後方ポツンで何もせずに周ってきたっていいじゃないか。

しかし、仏の顔も三度まで


何度も凡走を繰り返しながら出走手当だけを持ち帰る馬により、優先権を取り逃した旬な馬の出走枠が圧迫されている。出走手当狙いの馬は除外問題における最大の改善対象であり、整理する対象として最も適当な存在でもある。
休養明けや昇級によるペースの違いに対応できずに凡走する馬も多いが、それでも数走すればある程度の目処は付けれるだろう。
そこで、条件戦を対象に連続して大きな着順で凡走した馬に対して、出走手当を減額や一定期間出走決定順位を下位に回すのはどうだろうか。
タイムオーバーのように出走停止ではないが、それに近い処分とするのである。

試しに2015年~2017年の間に3走続けて10着以下に凡走した馬の頭数を出してみよう。
新馬・未勝利、OP・重賞クラスは別の問題があるので、ここでは古馬条件クラスに絞っている。
10着という固定値を利用するのは、少頭数になりやすい条件戦で処分を受ける馬が出るのをを避けるためである。


へっへっへ、3年で1926頭に低質馬の烙印を押してやったぜ

え、多すぎるって?
それにウインガニオンなんて後の重賞馬も問題じゃないかって?
じゃあ、5走連続10着以下に変えてみよう。

よし、465頭に減ったぞ
ん、ちょっと減らしすぎ?
では、今度は3走連続12着以下で出してみよう

今度は599頭と少し増えたぞ。

削減ラインをどこにでも置けるよ

新制度に対しては現場の対応次第で期待通りの効果が得られないことも多い。
この案の良い所は(自分で言うなよ)、過去実績を基にシミュレートしやすく、現場の動きに対して着順・回数・レース条件といった細かい条件設定により削除ライン調整の小回りが効く点である。

降級制度の廃止直後はレース編成のバランス調整が非常に難しくなる事は間違いない。
しかし、このシリーズで書いたように競走馬の供給過剰状態が続くことも確かな訳で、それを解消する施策も同時に打たなければならない。
この案なら、芝・ダート・距離などで条件を変えることも可能だし、緩い縛りから徐々に締め付けていくことも可能で、不安定な状況にも対応ができるだけの柔軟性を持ち合わせているはずだ。

なお、この案は転用フリーであり、勝手に拝借して「おれが考案した!」と主張しても構わない。
その際は、競走馬と競争数の需給バランスの問題も併記してネ。

最後に

先日発表されたクラス名称の変更に対して異論、違和感といった非難轟々あるが、娯楽において取っ付きやすさというのは大事なポイントで、レースの格を具体的にわかりやすくというのは案外大事なことである。
500万下などの名称も一定期間残るそうなので、500年ぐらいは併記して頂きたい。

それよりも、今回の件を絡めつつ降級廃止そのものに異論を唱える人の名前は覚えておいて損はないだろう。特に、その理由として早期引退が増える事を問題視する人は、JRAが抱える問題と改革の意図を理解していないとも言える。
降級廃止により起こりうる除外問題を取り上げる記事を自分は見たことがない。
早期引退・やらずが増えると言う前に、指摘するべき問題があるだろう。

1000万下と準オープンの優先出走条件を整備しておかないと除外ラッシュの混乱は極めて高い確率で起きる。
そして、現状の認識では降級を廃止したから除外ラッシュが生まれたという人間は必ず現れる。何人も現れる。
このシリーズはそれに対する危機感から書いている。

何度も繰り返しとなるが、JRAは馬を抱えすぎている。
その認識をファンレベルまで広めなければ、JRAの施策とファンと現場の感覚は乖離したままである。


次:JRAのスリーアウト法導入についての一考察
その7:将来トレセンの25%が廃業する事になる(かもしれない)という話
その8.新馬戦の除外ラッシュが長期化するかもね


コメント

  1. マラ男 より:

    一番の問題点は芝条件の出走数割れ。日本競馬は中央地方加えてもダート競馬が本質。

    *地方のダートの長距離戦が少ない。
    *中央の下級条件の短距離戦が組まれ過ぎ。
    *ダート→芝転向が多いが、芝転向→ダートは少ない。
    *ダートデビュー馬→芝GI制覇も少なくなった(タイキシャトル、エルコンドルパサー等)。
    *芝向きなのに、ダート使うと「馬知らない馬主」が文句言う。
    **新参馬主(一口クラブも)は芝への拘りと憧れが強い。
    *ダート向きの種牡馬が減少(サンデーサイレンスが多い)。
    **ダート向きの種牡馬の値段が異常に高い。
    ***特に輸入種牡馬。
    *調教師が芝レースを複数回使うの慎重になった。
    **レース数を使わない。

    まだまだ、あると思いますが。
    今日明日の出馬表の「頭数」を見てください。ダートが多く、芝は少ない。
    降級制度廃止の何かが見えてくると思います。

    • Luthier より:

      大体は同意するんですが、芝条件の出走数割れが一番の懸念点というのは同意しかねますねぇ。
      「ダートの除外問題をどうすんねん」というのをテーマに長々と書いてきているので。
      短距離戦が組まれすぎというより、組まざるを得ないわけです。
      あと、レース数を使わないというより使えない、というのが現状かと。

  2. マラ男 より:

    すみません、わけのわからないことを言って。何度も主さんの意見を読み返しても結論がでないですね。東西の馬房数とレースの出走枠数が合えばいいのですが。

    • Luthier より:

      いえいえ、結論が出ないのは自分も一緒ですので。
      レースバランスと登録馬のバランスが崩れているという認識を広めようという締め方は、ある意味逃げですからね(笑)
      どこを落とし所にするのかは、本当に難しいですなぁ。

  3. 名無し より:

    地域によっては近走の収得賞金でクラスが上がり下がりする主催者がありますけど(ぶっちゃけ岩手とか)
    中央も頭打ってる馬の転出を促すために
    近走の平均収得賞金の低い馬の出走登録順位を下げるルールがあってもいいと思います。
    逃げて捕まって大敗とか包まれたとか進路妨害食ったとかありますんで
    前走で3着(5着)以内に入らんかったから、とかで順位を下げるとかはなしで

    条件でも賞金稼げない馬は3、4か月以上実質出走できないとかになれば馬置いておかんでしょう…

  4. ペルノ より:

    Luthierさんの考えどおりと言うか厳しくなって、JRAから発表されましたね。

    着差2秒は回数に数えない位の救済は必要ですが。

    • Luthier より:

      自分は条件戦を対象とした案を出したんですが、JRAは未勝利を対象にしてきましたね。
      たぶん、救済よりも更に絞る必要性が出てくると思います。
      いまその辺をまとめて書いてます。