降級廃止が招く混乱の可能性

最後の降級が終わり、来年以降クラス毎の在籍頭数が大きく変化する。
それにより、どんな問題が発生するのだろうか。
動画では殆ど触れなかったこの部分に関して掘り下げてみよう。

なんで降級を廃止するの?

現在、JRAでは増加する出走希望に対してレースの供給が追いつかず需給バランスが崩壊し除外問題を抱えている(前回:降級制度を廃止する理由と疑問
特に500万下での除外問題が顕著なため、降級制度を廃してクラス編成を押し上げてレース資源をフル活用しようというのが今回の狙いである。
今年の降級頭数で想定すると、来年からは500万下は403頭削減(現所属頭数から約15%減)される一方で、1000万下は246頭増(同約27%増)、1600万下は110頭増(同約30%増)、OPは47頭増(同約10%増)となる。


※JRAが公開しているイメージが分かりやすいので、そのまんま転載。

では、降級廃止により除外問題は解決するのであろうか。
解説動画では、面倒くさくなって「外厩の発展により臨戦態勢にある馬が増えているからレース数を増やさぬ限り、出走希望を満たすことは出来ない」と雑に終わらせてしまったが、このエントリーでは少し掘り下げて考察してみたい。


JRAが描く理想図

降級の廃止によって除外問題の改善が図られるには、先に掲載したJRAの在籍頭数の変化イメージとクラス別の除外発生率が一致しているのが理想である。
除外件数は分からなかったので、前回と同じように除外率をフルゲート率に置き換えて数字を出してみよう。
現在のフルゲート率が階段状となっていれば、JRAの想定と一致していることになる。

おぉ、条件戦においては見事に階段状である。
OPクラスが少々高いが、JRAがOP競争を増やす考えを示している事を考えれば不自然な数字ではない。
降級廃止によって在籍クラスが上に押し上げられ、クラス別のフルゲート率がある程度均一化されれば、まさにJRAの狙い通りという事になる。

JRAが直面する現実

ただ、ここで一つ疑問が生じてくる。
このクラスの中には芝もダートも短距離も長距離もある。
果たして、レースの需給問題を考える際に各路線を全て一纏めに扱って良いのだろうか。

早速、先程のフルゲート率に競争条件も加えて新たに出してみよう。

香ばしいグラフに変化してしまったヨ

芝路線ではJRAの狙い通り、全体的に出走数の均一化と除外ラッシュの改善が十分に見込めるだろう。
問題となるのはダート、特にダート短距離路線である。
この路線は準オープンの冬に多少の余裕が生まれる程度で、基本的には通年で除外が発生し常態化している。
結局の所、どれだけ効率化を図ろうとしてもレース数を増やさなければ出走需要とレース供給が釣り合わないのである。


コメント

  1. いち競馬ファン より:

    興味深く読ませていただきました。
    私自身も現状に文句を言うだけの一部の評論家と同じことをしていたので目から鱗が落ちる感じでした。
    現状、専門誌などではこうゆう記事は私が見てる範囲では期待できないのでこれからもこうゆう記事があることを期待しています。

    • Luthier より:

      コメントありがとうございます。

      一応、このシリーズはあと2,3回続きます。
      自分としては、これらの問題を語る時には、何が原因で何が起きているのかをきちんと共有しなければならないのだろう、という認識です。
      この問題を解決するにはどこかを切り捨てなければならないんですが、問題を共有できぬままで強行した所でろくな事にはならないですから。
      開催日数の拡大を実現できる政治力のある人がポンと出てくる奇跡が起きれば話は別ですが。

  2. いち競馬ファン より:

    単純な開催日数の拡大ですと地方は反対するでしょうし、ダート馬の問題含め何をするにしてもやっぱり中央と地方が一括した組織になるほうがよりスムーズに問題は解決できそうですね。それが難しいから小手先だけで解決する方向にいってるんでしょうけど

  3. Luthier より:

    開催日数の拡大は地方よりも官僚と政治機構でしょうねぇ。
    海外馬券の発売でも売上に何かしら紐付けしようとしてましたし、あいつら使えねぇ。

    この問題は中央と地方が一体となって考えないといけないんですけど、なかなかその方向に行く気配がない。
    本来は一体となって競走馬のライフサイクルのモデル構築しないといけないんですけどね。